超高齢社会といわれる現代ですが、相続対策のご相談をされる方の年齢を聞いてそれを実感することが多くあります。
対象となる「おじいちゃん」「おばあちゃん」はもちろん、「お父さん」「お母さん」でも、90歳オーバーということも最近では珍しくないように思います。
子供のいない叔父叔母ご夫婦
先日は、お子さんのいないご夫婦の甥っ子さんから、90代の叔父さんと叔母さんの財産凍結を防ぎたいということで、家族信託のご相談がありました。
ご本人様たちにお会いしてみると、体は年相応に衰えているものの判断能力に問題はない様子だったので、一通り説明をして同意を頂き、家族信託と遺言作成を受任することにしました。
この年代の方々は、兄弟姉妹がたくさんいるという方が多いうえ、親族内外での養子縁組も多く行われ、親族関係がかなり複雑です。
中には奥さんを3回4回と替えて、その都度たくさんの子をもうける男性もたまにおられるので、その次世代の方々も、ねずみ算式に増えていくことになります。
この相談者様ご夫婦も御多分に洩れず、親戚が多すぎて把握できていないと甥っ子さんから聞き、「これがもし対策なしで亡くなっての遺産分割協議だったら相当しんどかったな」と思い、胸を撫で下ろしていました。
いつ来るか分からない、その時
粛々と準備を進めていたある日、甥っ子さんから「叔父さんの物忘れが急に進んでいる。脳の病気かもしれない。家族信託のことを聞いても理解できない様子」と連絡がありました。
年齢から考えれば無理もないことではあったので、家族信託は中止して遺言作成だけを行おうということになり、急ぎ面会の日程調整をしていたところ、そのわずか2日後に「亡くなりました」という連絡が。
しんどいと思っていた遺産分割協議が現実となってしまったことに一瞬絶望しましたが、こればかりはどうしようもないので、叔父さんのご依頼を相続手続に切り替え、しっかりしている叔母さんの家族信託の準備を並行して進めることにしました。
ところが、そのまた数日後、夫を失った寂しさからか叔母さんもみるみる体調を崩し始め、おかしいと思った甥っ子さんが病院に連れていったところ、末期の膵臓癌の宣告をされた、という連絡が入ったのです。
年齢も年齢なので、もう明日どうなるか分からないからせめて遺言だけでも残したい、とのご意志を聞き、これまた家族信託は中止して、入所している施設でどうにか公正証書遺言を作成しました。
追いかけるように…は、よくあること
その約1週間後、今後の手続きの説明に甥っ子さんのご自宅に伺ったところ「実は叔母さんが、今朝亡くなったんです」と知らされました。
何となく予感があったものの、お悔やみ申し上げながら脱力してしまいました。
唯一の救いは、叔母さんの遺言を作成できていたことですが、いわゆる数次相続に該当することになるため、何も対策ができなかった叔父さんの手続きをまずは終えなければなりません。
<続く>